ホーム > 「貧困」ってなに? > 「貧困」ってなに? バックナンバー

 

「貧困」ってなに? バックナンバー

第3回<貧困は開発途上の国の話? 1>

 

聞きたい人:

「貧困・貧困って言うけれども、アフリカとかアジアのある地方で仕事もないから貧しい人がいるのはわかるし、それは何とかしないといけないと思うから募金もするけれども、日本のような何でもある国で貧困になんかになるわけないでしょ。

仕事だって選り好みしなきゃ必ずあるし、単にだらしないからそうなるだけでしょ。やる気がないだけだよ。」

 

答える人:

「何でもいいから仕事があれば人は生きられるものではありません。

まず入口、すなわち 求職にかかわって。現在の雇用情勢は、明らかに安定的な収入を得られる求人が減少しています。正規労働者の有効求人倍率は、2009年後半は0.4を切っ ています。10人のうち4人分の正規雇用の仕事もない計算になります。そのかわりと言っても差し支えないことですが、非正規雇用が増加しています。 1985年に16%だったその割合は、2008年には全体の3分の1を上回りました。

就職しても、生活していく十分な給与を得られない人が増えています。このような人たちをワーキングプアといいますが、OECD(経済協力開発機構)は「ワーキングプアは日本の貧困層の80%以上を占めている」と分析しています(『OECD雇用アウトルック2009』)。 このことにかかわって、宮本太郎は著書の『生活保障』[岩波新書・2009年]で、「正規雇用の男性稼ぎ主と主婦の家計補完型のパート雇用」との典型的な 従来の雇用の構造が保持されたまま、正規雇用にとってかわって主たる家計の収入源である非正規雇用が広がってきたこと、また最低賃金の水準がOECD諸国 の中で低い(日本のフルタイム労働者の平均的賃金に対する比率は32.9%。フランスは60.8%、アメリカでも36.8%)ことを論じています。

このように、仕事があったからといって貧困状態から必ずしも抜け出られないことを示しています。

また、日本の母子世 帯のうち、母親の職がある割合は諸外国よりはるかに多いことが知られています。しかし不安定な雇用で収入がとても低く、生活が苦しいケースが多いことが知 られており、子どもの貧困も深刻です。(代表的な研究者は国立社会保障・人口問題研究所の阿部彩など。このことについて論じた読みやすい本には、阿部彩 『子どもの貧困-日本の不公正を考える』[岩波新書・2008年]、山野良一『子どもの最貧国・日本』[光文社新書・2008 年]があります。)

また仮に正規雇用となっても、最近映 画のテーマにもなったブラック企業の存在があります。ブラック企業とは、法律を無視して営業したり社員を働かせたり、職場内でハラスメントが当然の社風が ある会社、その過酷な仕事に見合わない給与の会社などを指します。そこでとても傷ついて、病気になって新たな職に就けない人も少なくありません。」


第2回<生活保護ってどこで手続きするの?>

 

聞きたい人:

生活保護の申請をするのは、どこに行けばいいの?

 

答える人:

生活保護の申請は、福祉事務所で行います。福祉事務所(法律での用語は「福祉に関する事務所」)は、都道府県・市・特別区(東京23区)には必ずあります。

市・特別区(東京23区)に住居がある方は、その市・特別区の福祉事務所に行きます。町村では、一部の町村が福祉事務所を設置しています。一部の町村以外にお住まいの方は、管轄する都道府県福祉事務所に行きます。なお、お住まいの町村を通して都道府県福祉事務所に申請することもできます。

東京都内の福祉事務所の場所はここをクリックするとわかります。

 

聞きたい人:

そうなると、住所のない人は生活保護を受けられないの? 家がなくなってネットカフェで生活している友だちも、ある福祉事務所に行ったら「住所のない人は生活保護を利用できないですよ」と言われたらしいし・・・。

 

答える人:

「住所がないから」とか「若いから」とかいうことだけで生活保護を利用できないというのは、全くのでたらめです。アパートなどに暮らしている場合は住所のある自治体の福祉事務所が窓口ですが、お友だちのようなネットカフェで生活している場合や、公園などで野宿生活をしている時には、原則としては近くの福祉事務所で申請します。

 

聞きたい人:

生活保護を福祉事務所で申請するとその後の手続きはどうなるの?

 

答える人:

福祉事務所で申請書を提出すると数日の間に面談があって、ケースワー カーにこれまでの生活歴などについて聞かれます。また同時に資産の調査(貯金がいっぱいないかどうかなど)や、家族などに援助が可能かどうかの照会などが あります。家族によって被害にあっている場合(例えばDVなど)は、居場所を伝えられないように頼むことができます。

申請から原則として14日以内(最長30日)に保護の決定がなされ、保護が開始される時は申請日にさかのぼって保護費を支給されます。

なお、所持金がとても少なく、また住むところがないような場合、保護が開始されるまで当面の生活費(住む場所がない場合、福祉事務所が宿を確保できない時は宿泊代が安い宿に泊まる費用を含めて)の貸付けを受けることができ、その費用はあとで保護が開始されたら保護費から精算します。

 

ホームレス総合相談ネットワーク発行の『路上からできる生活保護申請ガイド』を参考にしました。 

生活保護法の条文はここから見られます。


第1回<生活保護ってどんな制度?>

 

聞きたい人:

生活保護を受けている人が今増えているとか、今日(11月30日)ワンストップサービスが試行されたとか、最近生活保護がどうのって話をよく聞くけれども、そもそもどんな制度なの?

 

答える人:

人生山あれば何とやら。人生において貧困状態になることは十分考えられます。

憲法第25条第1項では

「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」

と書いてあって、第2項では国の責任を記しています。

その「最低限度の生活を営む権利」を具現化するためにあるのが生活保護法です。

国民の権利としてはっきり定められていて、生活保護について

「お上の世話になるな」とか

「お上の世話になるのは申し訳ない」とかいうのは見当違いです。

 

聞きたい人:

生活保護って、役所からどんな援助をしてもらえるの?

 

答える人:

生活保護は、自分の持っている資産とか能力などを最低限度の生活の維持のために活用することを要件としていますので、例えば銀行の口座にいっぱいお金の入っている人は原則として、お金があるうちは保護を受ける要件にあたりません。

保護の種類は8つあり、

生活扶助(日常使うためのお金。食事とか着る物とか光熱費とか)

住宅扶助(住居の家賃や修繕のお金など)

医療扶助(お医者さんに行ったり、薬のお金など)

その他教育扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助があります。

例えば生活扶助の金額は、地域、年齢、世帯構成などによって変わってきます。

 

生活保護法の条文はここから見られます。